【筋肉を追い込むということは危険が隣り合わせ】筋トレで追い込むための方法とその注意ポイントとは
2017/10/24
筋トレを効果的にするにあたってオーバーロード(過負荷)の原則というものがあります。筋肉は限界まで追い込まれて初めて大きくなる必要があると認識します。なので筋肥大を目指すのであれば必ずその日のトレーニングでターゲットである筋肉を限界の状態まで追い込む必要があります。簡単に言うと「楽な筋トレでは筋肉は大きくならないよ」という事です。
そこでオーバーロードの原則を利用してその時の筋肉の限界を迎える負荷を与えてやらなければいけないのですが、なかなか体に限界近い負荷を与えてやるのは簡単ではありません。限界に近づけば近づくほど危険も増えるし、無意識に負荷を逃がしてしまって思うように筋肉を追い込めない初心者の方も多いです。
そこで筋トレでターゲットを追い込むとはどういうことなのか、追い込んでいると思っていたけど実は追い込んでいなかったといった事が無いように、注意するポイントや追い込むテクニックもあわせて復習したいと思います。
筋肉を追い込む際に注意したいポイント
まず筋肉を追い込むときにフォームが崩れてしまって筋肉を追い込めないという事があります。人間の身体は基本的には効率的に筋肉を使おうという習性があります。それは物を運搬する仕事などでは必要なことですが筋トレに関してはそうではいけません。
初めのうちは筋肉に疲労も無いので正確なフォームで出来ても、きつくなってきてからフォームが乱れてしまっては水の泡です。俳優の金子賢さんは言っていました「筋トレは重りが上がらなくなってから筋トレだ」と。つまり筋肉に限界が来てからいかに正しいフォームでさらに追い込めるのかという事です。
また重りを目標回数まで上げたいという気持ちが強すぎてフォームが崩れることもあります。筋トレの目的は重りを上げることではなく筋肉を疲労させ追い込むことです。チーティングというあえてフォームを乱して筋肉を追い込むテクニックもありますが、そのチーティングにも正しいフォームがあります。常に筋肉に負荷をかけるためには正確なフォームを心がけましょう。
また安全面を考えると正しい呼吸や補助をしてもらうという事があります。重い重量で筋トレをする際に息を止めやすくなりますが、それは重りを上げる一瞬のことでその後しっかり息を吐く必要があります。完全に息を止めて筋トレをするとチアノーゼ(酸欠状態)気味になってしまい集中するどころか、立っていることすらやっとという事になってしまいます。
そしてジムでトレーニングしている方やパーソナルトレーナーを付けている方は限界が来たときに補助を依頼しましょう。例えばベンチプレスで自分の胸に重りが落ちてくる光景はけっこう怖いものです。ですが補助があればバーベルが胸に落ちてきても助けてもらえるので気が散ることなく追い込むことができるのです。補助をつけれる環境にいる方はぜひやってみてください。
筋肉を追い込む方法1:高重量トレーニング
筋肥大を狙っていくには筋肉に大きな負荷を与え筋繊維を太くしていく必要があります。回数で言ったら1セットの限界回数が6~10回くらいだと思ってください。慣れないうちは1回目の拳上から重いと思えるくらいの負荷です。最後の1回は筋肉がプルプル震えて、唸り声を上げながらやっとこ持ち上げるような重さだと思ってください。
高重量を扱うのでゆっくりした動作に思えますが、実際はスピードを付けて加速させるように上げていきます。また基本的には反動を使わずに動作が行え、ちゃんとスピードのコントロールが出来るような重量に設定していきましょう。
高重量で追い込むためのポイントとしては、ウォームアップをしっかり行い筋肉・関節の温度を上げるのと共に自分のアドレナリンもどんどん出していきましょう。高重量でやるトレーニングは興奮した状態でないとなかなか追い込みきることができません。
先ほどの6~10回というのは本番セットの回数ですので、ウォームアップで行なうなら10~12回くらいで少し苦しさを感じる程度の負荷に設定しましょう。そして少しずつ興奮状態を作っていってください。
ですがひとつ気を付けてもらいたいのは回数にこだわり過ぎないという事です。一回一回の動きに集中して、いかに限界の状態まで筋肉を持っていけるのかにフォーカスしてください。ですから最後の1セットが3、4回で終わってしまっても全く問題はありません。大切なのはいかに筋肉を追い込むかということですので。
筋肉を追い込む方法2:パンプアップトレーニング
次に筋肉を追い込むやり方としてパンプアップさせるやり方を紹介します。これは高重量で筋肉を追い込むのとは対照的な負荷設定です。高重量は筋繊維を太くしていくことを目的にしますが、パンプアップとは一時的に筋肉の血流を抑えるような状態を作り筋肉をぱんぱんに張った状態を作ることを言います。そうすることで筋肉の断面積が増えていく効果がります。
重量の設定は軽めにして、1セットの回数も15回くらいを目安に行ないます。とにかく速く動かして筋肉を膨張させていくイメージで行ないましょう。当然ですが2セット3セットと繰り返すうちに出来る回数は落ちていきます。このパンプアップさせる時もきつくなってきても1回の動作は正確に行いましょう。フォームが乱れるとターゲットがズレてしまいます。
一昔前の日本のフィットネス業界ではこのやり方は筋肥大効果が無いと思われていました。どちらかと言えば筋持久力を鍛えたり、ダイエット目的のためのるトレーニングだと思われていました。しかしアメリカでは前から取り入れられていたやり方だそうです。
筋肉内の筋繊維を見ると筋原線維とフィラメント(筋節)に分けることができます。筋原線維が高重量トレーニングで鍛えられる部分で、このフィラメント内のアクチンやミオシンといったタンパク質を増やしていくのがパンプアップの効果だと思ってください。基本的にはまず先に高重量トレーニングを行ない、その後にパンプアップ種目で追い込んでください。
ちなみにパンプアップさせるための種目にはストレッチ系の種目が多いです。筋肉がストレッチされる方が血流が抑えられやすいためですね。
ストレッチ系の種目例
□脚:レッグエクステンション
□胸:バタフライ、ダンベルフライ
□背中:シーテッドロウ、ベントオーバーロウ
□肩:サイドレイズ、フロントレイズ
□腕:ダンベルカール、フレンチプレス
筋肉を追い込む方法3(番外編):アイソメトリックトレーニング
最後にちょっとした番外編という事でアイソメトリックトレーニングというものを紹介します。これは筋肥大にはあまり向かないトレーニング方法なのですが、機能的で健康的な体づくりには持ってこいの方法です。なぜ筋肥大に向かないかというと、この方法は同じ姿勢を長く保持するための筋持久力トレーニングであるため主に遅筋をターゲットにします。
遅筋は筋繊維が太くなりづらい筋肉のために筋肥大がしづらいのです。アイソメトリックトレーニングを別名、等尺性収縮運動といいます。書いて字のごとく筋肉の長さが常に同じ状態で行なう運動という意味で、体幹トレーニングであるプランクやブリッジがこの種類の筋トレに分類されます。空気イスも同じ姿勢をずっと保持するので下半身のアイソメトリックトレーニンングという事ですね。
これに対しダンベルなどウエイトを上げ下げする筋トレをアイソトニックトレーニング(等張性収縮運動)といいます。筋肉の長さは関節の稼働位置によって変わるけれど、筋肉の張り=収縮状態は変わらずに行われるトレーニングです。筋肥大を目指すうえでは一番重要であり、筋トレといえばこの運動が1番皆さんに馴染があるであろうトレーニングの種類です。
話が逸れましたが、このアイソメトリックトレーニングによって姿勢を保持するための筋肉が鍛えられるので、体の軸が安定しやすくなりスポーツでのパフォーマンスがアップします。また普段の姿勢もまっ直ぐきれいな軸が保てるので、疲れづらくなったり腰痛や肩こりの予防になったりといった効果も期待できるのです。
筋肥大に向けた場合は短時間で追い込むべし
筋肉のサイズアップに焦点を戻しますが、筋肥大を目指すうえでは高重量で少なくか回数多くパンプアップかの方法でなおかつ短時間で追い込む必要があります。1セット終わって仲のいいジムの会員さんとおしゃべりに夢中になったり、メールの返信に夢中になって5分も時間が過ぎていたというのは非常にもったいないです。ビジネス用語でいう機会損失というやつですね。
効果を最大限に高めたい場合はインターバルは1分から長くても2分に留めましょう。上級者の方で意図的に長めにインターバルを入れる方もいますが、特に初心者の方は集中力が切れたりしやすいので呼吸が整ってきて筋肉に意識が向いてきたと思ったら2セット目に行きましょう。大げさな話筋肉に安心感を与えてしまっては筋肥大の信号が脳から発信されません。
ですから脳に「筋肉がこの体にはもっと必要なんだぞ」と思わせるためにもダラダラと休まずにトレーニングしましょう。筋肥大は短距離走とよく似ています。スタートからゴールまでの数秒間の中に全てを凝縮するような気持でやるのです。逆にすぐに気が散ったり、次のセットに中々かかれないときは疲労が抜けていないことが考えられます。そういう場合は勇気ある撤退をして、次回に力を温存しておきましょう。
追い込むことは練習と慣れも必要である
初級者の方はなかなか筋肉を限界まで追い込めない方がいます。パーソナルトレーニングなどで見ていると、きつくなってきて腕が上がらなくなってくると笑いだしてしまう人がいます。筋トレで追い込むことに慣れてしまっているこちらとしては「なぜここで?」という感じでも、その方にとっては他人の前で目いっぱい力む光景が面白かったのかもしれません。
この方のような場合は笑っている分まだまだ力が出せます。あと1回はバーベルが上がったのではないでしょうか。この方のような精神状態のことを「心理的限界」といいます。もうここまでしか上がらないんだと思ってしまう自分で作る限界値のことですね。これに対し本当に筋肉が力を発揮することができる限界の数値を「安全限界」といいます。
この心理的限界は日頃の筋トレを行なう過程で大きくしていくことができます。少しづつ追い込まれた状態を経験していけば、人は不思議と慣れていくものです。もちろん追い込んだ状態は楽になるわけではないのですが、少なくても笑ったり人目が気になることは無くなります。ちゃんと筋肉を追い込んだという感覚が分かるようになるでしょう。
それでも筋肉を限界まで追い込む感覚が分からないという方は、ジムでパーソナルトレーナーを付けたり動画サイトで実際に筋トレの追い込んでいる動画を見ると参考になると思います。パーソナルトレーナーは追い込む瞬間をいい意味で煽ってくれますし、動画で筋トレの様子を見ると表情や声でも追い込んでいる様子が伝わってくるので非常に勉強になります。
【筋トレで追い込むための方法とその注意ポイント】まとめ
□追い込む際に注意するポイントは正確なフォームを心がけ、適切に呼吸、不安があれば補助をお願いする。
□追い込む方法1 高重量で重りが上がる限界回数を目指し、筋繊維を太くする。
□追い込む方法2 パンプアップさせ限界回数を目指し、筋肉の断面積を広げる。
□追い込む方法3 アイソメトリックトレーニングは同じ姿勢で筋肉に負荷をかけ、正しい姿勢をキープすることが出来る筋トレ方法。
□筋肥大にはインターバルを長く取り過ぎない。集中力がないと感じる日は休養にあてる。
□追い込むことには練習と慣れが必要。筋トレには安全限界と心理限界があり、心理限界のボーダーを下げる必要がある。
□パーソナルトレーナーを付けることで追い込みやすい環境を作れる。また動画を見ることで追い込むイメージを作ることも効果的。
以上が筋肉を追い込むうえでの大切なポイントになります。筋トレを始めたばかりの頃は追い込みをかけることに恐怖を感じやすいのですが、慣れてくれば怖いどころか追い込むことが楽しいという事にすらなってきます。
また筋肥大したければ必ず追い込まなければいけません。しかもただ追い込めばいい訳ではなく、ターゲットを意識してしっかりと効かせていくことが必要になります。冒頭で解説したオーバーロードの法則は、脳に対して筋肉を大きくする必要があると思わせるための筋トレにおける基本原則です。そのためにもターゲットを追い込む感覚というものを是非マスターしていってください。